AlxisDataBlog-数学・物理学

前回は $th(t)$ が狭義単調減少の場合の証明をやりました。今回は $th(t)$ が狭義単調増加の場合を考えます。

\begin{align} (\alpha Wf(x_0))^2=(\alpha Wg(x_0))^2\ge \{\alpha g(x_0)(hg)(x_0)\}^2 > \{\alpha f(x_0)(hf)(x_0)\}^2 \end{align}

より、今回は

\begin{align} -(\partial_xf(x_0))^2+\|\nabla f(x_0)\|^2 > 0 \end{align}

が成立します。

\begin{align} x(0)=x_0,\ \partial x=(\partial_xf)x-\nabla f \end{align}

の解を $x=x_2(t)$ とします。証明は $x_1$ のときと同じなので省略しますが、結果だけ書くと

i). $\partial x_2\neq 0$ であり

\begin{align} l_2(t)=\int_0^t\|\partial x_2\|\,dt \end{align}

の逆関数 $l_2^{-1}$ が一意的に存在して、その導関数は

\begin{align} \partial l_2^{-1}=\dfrac{1}{\|\partial x_2\|} \end{align}

ii). $x_2\in S^{n-1}$
iii). $\partial (fx_2l_2^{-1})=-\|\partial x_2\|$
iv). 不等式

\begin{align} &-\partial_{x_2}f(x_2)^2+\|\nabla f(x_2)\|^2=\partial (fx_2l_2^{-1})^2,\\ &-\partial_{x_2}g(x_2)^2+\|\nabla g(x_2)\|^2\ge \partial (gx_2l_2^{-1})^2 \end{align}

が成立する。

今回も前回と同様に

\begin{align} &F=(fx_2l_2^{-1}),\ G=(gx_2l_2^{-1}),\\ &H=(hF)^2\{(\alpha F)^2+\partial F^2\}-(hG)^2\{(\alpha G)^2+\partial G^2\} \end{align}

とおいて議論を進めます。まず、$H$ を下から評価して

\begin{align} H\ge (\alpha Wf)^2-(\alpha Wg)^2=0 \end{align}

一方、上からは $F < G$ ならば

\begin{align} H &< ((hF)\partial F)^2-((hG)\partial G)^2\\ &=\bigg(\dfrac{(hG)}{F}\bigg)^2\bigg\{\bigg(\dfrac{F(hF)}{G(hG)}G\partial F\bigg)^2-(F\partial G)^2\bigg\}\\ &\le\bigg(\dfrac{(hG)}{F}\bigg)^2\{(G\partial F)^2-(F\partial G)^2\} \end{align}

これら上下からの評価を合わせて $|G\partial F| > |F\partial G|$ が得られます。ここで $\partial F < 0$ だったので $-G\partial F+F\partial G > 0$ が成立します。したがって $F < G$ ならば

\begin{align} \partial(G/F)=\dfrac{F\partial G-G\partial F}{F^2} > 0 \end{align}

$F(0) < G(0)$ より $G(s)/F(s)$ は $s \ge 0$ で狭義単調増加となります。ここでもう一度 $H$ の評価を見直しましょう。

$f\big|S^{n-1}$ の最小値を $m$ 最大値を $M$、$g\big|S^{n-1}$ の最小値を $\tilde{m}$ 最大値を $\tilde{M}$ とします。また、$c=G(0)/F(0)$ とおくと $G/F \ge c$ が成立します。これに注意して

\begin{align} H&=(\alpha F(hF))^2-(\alpha G(hG))^2+((hF)\partial F)^2-((hG)\partial G)^2\\ &\le \alpha^2mh(m)\sup_{m < t < M}\{th(t)-cth(ct)\}+\bigg(\dfrac{(hG)}{F}\bigg)^2\{(G\partial F)^2-(F\partial G)^2\}\\ &\le\alpha^2mh(m)\sup_{m < t < M}\{th(t)-cth(ct)\}+(hG)^2(-G\partial F-F\partial G)\dfrac{F\partial G-G\partial F}{F^2}\\ &\le\alpha^2mh(m)\sup_{m < t < M}\{th(t)-cth(ct)\}-2\sup_{\tilde{m} < t < \tilde{M}}th(t)^2\partial F\dfrac{F\partial G-G\partial F}{F^2} \end{align}

したがって、或る $M_0 > 0$ が存在して

\begin{align} \dfrac{F\partial G-G\partial F}{F^2}\ge -M_0\dfrac{1}{\partial F} \end{align}

という評価が得られます。この式を $0$ から $l_2(\infty)$ まで積分すると、右辺は $\infty$ に発散するため $G/F$ も発散してしまいます。$f\big|S^{n-1},g\big|S^{n-1}$ の最大値最小値に注意すると $G/F$ は上から $\tilde{M}/m$ で抑えられなければならないため、矛盾が生じますね。

背理法より $f(x_0) < g(x_0)$ という前提がダメでした。逆向きの大小関係を仮定しても同様に矛盾します。したがって球面上では $f=g$ でなければなりません。

以上で、$W$ の単射性が得られました。話を元に戻すと、ウィンターニッツ変換は単射であると言えます。ちなみに $th(t)$ の条件である「狭義」を「広義」に変更してしまうとウィンターニッツ変換は単射ではなくなってしまいます。今回はここまで。(written by J.Nishigata)

ウィンターニッツ変換その３