AlxisDataBlog-数学・物理学

まず、積分変換を定義しましょう。今回は或る程度の一般性をもった積分変換です。$N$ 次多項式 $K$ に対して

\begin{align} \mathscr{K}_Kf(y)=\int_{S_y}K(\langle x,y\rangle)f(x)\omega \end{align}

この積分変換は半球面一般コサイン変換と呼ばれます。今までやってきた、ファンク変換、半球面コサイン変換、そしてウィンターニッツ変換に登場した $K(t)=1+t$ という積分変換も今回考える積分変換の具体例となっています。

直接ファンク-ヘッケの因子を計算しても良いのですが、計算を楽にするために式変形の工夫をやりましょう。

まずは、多項式 $K$ をルジャンドル多項式に直交分解してみます。

\begin{align} K=\sum_{i=0}^Nc_iP_i \end{align}

各係数の計算方法は覚えていますか。

\begin{align} \int_{-1}^1(1-t^2)^{(n-3)/2}P_iK\,dt&=\sum_{j=0}^Nc_j\int_{-1}^1(1-t^2)^{(n-3)/2}P_iP_j\,dt\\ &=\sum_{j=0}^Nc_j\dfrac{\sigma_{n-1}}{\sigma_{n-2}N_j}\delta_{ij}\\ &=c_i\dfrac{\sigma_{n-1}}{\sigma_{n-2}N_i} \end{align}

このようにして求めましたね。ここに $N_i=\dim H^i$ を意味します。続いてルジャンドル多項式の偶奇で分けます。

\begin{align} &K=c_0+\sum_{i=1}^{\mu_0}c_{k_i}P_{k_i}+\sum_{i=1}^{\mu_1}c_{l_i}P_{l_i},\\ &k_i:\ \text{even number,}\ l_i:\ \text{odd number} \end{align}

偶関数の和を $K_0$ 奇関数の和を $K_1$ と書いておきます。

\begin{align} K_0=c_0+\sum_{i=1}^{\mu_0}c_{k_i}P_{k_i},\ K_1=\sum_{i=1}^{\mu_1}c_{l_i}P_{l_i} \end{align}

突然ですが、各項が零ではない互いに異なる数列 $\{z_1,\dots,z_m\}$ に対して正方行列 $((z_i)^j)$ は正則でしょうか。

\begin{align} \sum_{j=1}^m\alpha_j(z_i)^j=0,\ i=1,\dots,m \end{align}

ならば $z_1,\dots,z_m$ は高々 $m$ 次の方程式 $\alpha_1\lambda+\dots+\alpha_m\lambda^m=0$ の解でなければなりません。

\begin{align} \alpha_1\lambda+\dots+\alpha_m\lambda^m=\alpha_m(\lambda-z_1)\cdots(\lambda-z_m) \end{align}

$\lambda=0$ を代入すると $\alpha_m=0$ が得られます。したがって恒等式として $\alpha_1\lambda+\dots+\alpha_m\lambda^m=0$ すなわち $\alpha_1=\dots=\alpha_m=0$ が得られます。以上で $((z_i)^j)$ が正則であると分かりました。

$((\lambda_{k_i})^j),((\lambda_{l_i})^j)$ は共に正則です。したがって $\{a_i\},\{b_i\}$ が存在して

\begin{align} \sum_{j=1}^{\mu_0}a_j(\lambda_{k_i})^j=1,\ \sum_{j=1}^{\mu_1}b_j(\lambda_{l_i})^j=1 \end{align}

とすることができます。これを使うと

\begin{align} K_0&=c_0+\sum_{i=1}^{\mu_0}c_{k_i}P_{k_i}=c_0+\sum_{i,j=1}^{\mu_0}c_{k_i}a_j(\lambda_{k_i})^jP_{k_i}\\ &=c_0+\sum_{i,j=1}^{\mu_0}c_{k_i}a_jL^jP_{k_i}=c_0+\sum_{j=1}^{\mu_0}a_jL^jK_0 \end{align}

同様にして

\begin{align} K_1=\sum_{j=1}^{\mu_1}b_jL^jK_1 \end{align}

と変形できます。ここに $L$ はルジャンドル作用素です。今回はここまで。次回は球面ラプラシアンの冪級数の零点の話をします。(written by J.Nishigata)

ルジャンドル作用素の冪級数による多項式型積分核の表現